音の記憶

written by Yumi Notohara

「ヒロシマと音楽」データベースの更新

 

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久しぶりに「ヒロシマと音楽」委員会所蔵のデータベースを更新しました。このデータベースは、「ヒロシマ」を題材にした、あるいは「ヒロシマ」に関わる音楽作品情報をデータベース化したものです。

 

1995年に「ヒロシマと音楽」実行委員会(その後「ヒロシマと音楽」委員会に改称)が立ち上がり、私自身も初めは学生メンバーの一人として、その後は平委員としてデータベース化作業に携わってきました。2007年には私自身が第2代委員長職を引き継ぎ、現在に至りますが、「楽譜から音を起こす」ことを重視した私はコンサートの企画と制作、また個別の作品調査、広島の音楽史編纂などに力を入れたため、2000年代以降の新作のデータベース化についてはほぼ手付かずの状態でした。また、2008年からフィンランドの作曲家、エルッキ・アールトネンの《交響曲第2番「HIROSHIMA」》の調査を開始し、2015年にこの交響曲の60年ぶりの日本再演を実現させるとともに、『「ヒロシマ」が鳴り響くとき』(春秋社)を出版、その後は「戦争と音楽」へと調査対象が広がり・・・と、年々データベース化作業から遠ざかってしまっているのが現状です。

 

ですが、楽曲の記録をデータベースとして残すことの重要性はよくわかっているので、このように少しずつでも更新していきます。実際、今回の更新で新たな傾向も見えてきました。やはりこの作業は重要ですね。将来的には、AIなどがウェブ上から自動的に楽曲情報を拾ってきてデータベース化してくれたらどんなに助かることか、と期待しています。

 

一方で、最近は作曲家自身がYou Tubeなどで楽曲を公開していることが増えてきたので、データベース上でもURLのリンクを貼ってすぐに曲が聞けるようにできるのでは、などと思ったりします。以前から、データベースとともに「音楽を聴いてみたい」という声が幾度も上がっていたのですが、著作権の問題その他の理由で「難しい」としか言えませんでした。時代がどんどんと変化していくので、データベースの役割や活用法についても、その都度再考する必要があるように思います。

 

なお、データベースの情報は完全ではなく、不備や誤り、また抜け落ちている作品も数多くありますので、お気付きの点がありましたら、委員会HPの「問い合わせ」などからお知らせいただければ幸いです。

 

 ヒロシマと音楽」委員会

http://hirongaku.com/

 

データーベース

http://hirongaku.com/?page_id=8

 

 

 

アンサンブル・アッカ第20回定期公演のご案内

 
 

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広島の現代音楽グループ、アンサンブル・アッカの20周年記念公演に登壇させていただくことになりました。コンサートのテーマは「広島と音楽」、私自身はコンサートの前に「戦後の広島/ヒロシマと音楽」の流れについて少しだけお話する予定です。その後、作曲家の久留智之さんと徳永崇さんと3人で「ヒロシマ」の表現についてトークをさせていただきます。
さらに注目すべきは、今回の記念公演に向けて広く作品公募が行なわれ、その中から選ばれた新作5点が初演される事です。被爆から75年が過ぎ、「広島/ヒロシマ」はどのように音で表現されるのでしょうか。「戦後の広島/ヒロシマと音楽」の流れを踏まえた上で、これらの作品を照らし合わせると、様々なものが見えてくるのではないかと期待しております。
 
公演は下記の日程で行われますので、ぜひご来場ください。
 
日時:2022年4月30日(土)
    14:30〜15:15(基調講演)
    15:15〜15:45(トーク
    16:00〜(コンサート)
場所:広島市東区民文化センター スタジオ1
料金:一般2000円ほか
 

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2017年自選レビュー3選

過去に書いたレビューについては、リスト化するだけでもかなりの時間と労力が必要となるので省略します。ここでは、2017年以降に書いたもので印象に残ったもの(かつ、ネット上で閲覧可能なもの)3点だけを、「自選レビュー」として紹介します。

 

なお、公演の良し悪しと書いた文章の良し悪しが常に一致するわけではありませんが、強く印象に残った公演は、それがレビューにも反映されていることが多いので、ここに挙げる公演は記憶に残る公演であったと言えます。

 

****

 

2017年年自選レビュー

 

(1)

ハイナー・ゲッベルス×アンサンブル・モデルン 『Black on White』 エドガー・アラン・ポーモーリス・ブランショのテキストに基づく音楽劇

2017年10月27日 京都芸術劇場 春秋座
<構成・作曲・演出>
ハイナー・ゲッベルス

<出演>
アンサンブル・モデルン

 

レビューは下記をクリックしてください。

ハイナー・ゲッベルス×アンサンブル・モデルン 『Black on White』 |能登原由美 |

 

 

(2)

アーサー・サリヴァン コミック・オペラ「ミカド」
びわ湖ホール オペラへの招待

2017年8月5日 滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 中ホール
<出演>
指揮:園田隆一郎
演出・訳詞・お話:中村敬一

管弦楽:日本センチュリー交響楽団

びわ湖ホール声楽アンサンブル
 ミカド・・・・・・・松森 治
 ナンキプー・・・・・二塚直紀
 ココ・・・・・・・・迎 肇聡
 プーバー・・・・・・竹内直紀
 ピシュタッシュ・・・五島真澄
 ヤムヤム・・・・・・飯嶋幸子
 ピッティシング・・・山際きみ佳
 ピープボー・・・・・藤村江李奈
 カティーシャ・・・・吉川秋穂

 

レビューは下記をクリックしてください。

アーサー・サリヴァン コミック・オペラ「ミカド」|能登原由美 |

 

 

(3)

京都フィルハーモニー室内合奏団 創立45周年記念 第208回定期演奏会

2017年4月16日 京都コンサートホール小ホール(アンサンブルホールムラタ)
<演奏者>
指揮:齊藤一郎
独唱:柳原由香(ソプラノ)
     松平敬(バリトン
ミュージックソー:おぎ原まこと
エレクトロニクス:有馬純寿
管弦楽:京都フィルハーモニー室内合奏団

<曲目>
末吉保雄中原中也 “三つの詩” より 〈サーカス〉〈間奏曲〉〈春と赤ン坊〉
       ソプラノ:柳原由香
木下正道:「石をつむV」バリトンと室内オーケストラのための
       バリトン:松平敬
松村禎三:クリプトガム
       ミュージックソー:おぎ原まこと
山本和智:女声、アンサンブルとライヴ・エレクトロニクスのための「韻律の塔」
       ソプラノ:柳原由香
       エレクトロニクス:有馬純寿

 

レビューは下記をクリックしてください。

京都フィルハーモニー室内合奏団 創立45周年記念 第208回定期演奏会|能登原由美 |

ドキュメンタリー映画「音の記憶・つながり」(2013年公開、2015年DVD刊行/非売品)

 

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ドキュメンタリー映画「音の記憶・つながり」

 

 被爆の翌年から4年余り活動した「広島学生音楽連盟」の音楽活動について追跡したドキュメンタリー映画です。「ヒロシマと音楽」委員会が広島のNGO ANT-Hiroshima

と共同製作し、20137月に完成、翌8月に広島市内で一般公開しました。さらに、上映後に見つかった新たな資料からこの団体の様子を文章として記録し、その解説書とともにDVDを2015年に刊行しました。DVD国立国会図書館のほか、広島市立図書館、広島県立図書館などで閲覧できます。

 なお、私はこの団体の活動調査を行いましたが、「ヒロシマと音楽」委員会の代表として映画のプロデュースに携わるとともに、解説とナレーションを担当しました。

 

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闇に潜む声:『ジョーカー』『チェルノブイリ』にみるヒドゥル・グドナドッティルの音楽

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映画『ジョーカー』で2020年アカデミー作曲賞を受賞したのをはじめ、2019年制作のドラマ・シリーズ『チェルノブイリ』でも様々な作曲賞を受賞したヒドゥル・グドナドッティルの音楽について、下記に寄稿しました。

 

mercuredesarts.com