音の記憶

written by Yumi Notohara

「ヒロシマ・シンフォニー」の視聴とフリートーク「音楽と戦争」

E. アールトネン(Wikidataより)


ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、音楽界にもさまざまな形で影響を与え続けています。プーチン支持を表明していた音楽家の「追放」から始まり、ロシア音楽や音楽家のボイコットを呼びかける「文化的制裁」など。第一次、第二次世界大戦中に見られた敵国の音楽に対する制裁と同じことが再び繰り広げられています。

 

けれども、音楽は本来「鳴り響く」ことによって成立するものであり、それを「禁止する」ことは、憎悪という「負の連鎖」を生み出すだけで、何も未来に残すことはできません。

 

では、音楽に一体何ができるのでしょうか?そもそも、音楽はこれまでどのような役割を果たしてきたのでしょうか?このような危機的状況下で、音楽が何か役立つことはあるのでしょうか?

 

こうしたことを一緒に考えてみるイベントが下記のような内容で開催されることになりました。

 

まずは、一つの事例として、広島への原爆投下について音楽で表現した作品を取り上げます。つまり、フィンランドの作曲家、E. アールトネンが1949年に作曲した《交響曲第2番「HIROSHIMA」》です。2015年に広島、三原、西宮で再演されましたが、市場には出回っていないために普段は聴くことのできない作品です。その貴重な音源を通して、この作品の意図や内容、被爆者の受け止め方などをみていきます。

 

次に、この交響曲を足がかりとして、フリートーク&ディスカッションを行いたいと思います。ここでは、現在の状況なども踏まえて広く「音楽と戦争」をテーマに、参加者が自由に発言し、さまざまな考えや意見を聞き合う場にする予定です。

 

このイベントを通じて、音楽について、あるいは戦争について、改めて考えてみましょう。

 

                記

 

日時:2022年8月1日(月)16:00~18:00

概要: 第1部:「ヒロシマ・シンフォニー」の視聴(解説:能登原由美)

    第2部:「音楽と戦争」フリートーク&ディスカッション

    (司会進行:太田朱音・能登原由美)

参加資格:大阪音楽大学学生

 

参加を希望される方は、下記のURLをクリックしてお申し込みください。

詳細について折り返しご連絡いたします。

 

https://forms.gle/RHxo9FnTMW6iQPMr6

 

                                   以上

 

 

*エルッキ・アールトネン Erkki Aaltonen (1910-90)《交響曲第2番「HIROSHIMA」》について

 被爆4年後となる1949年に作曲され、同年ヘルシンキ世界初演された。広島の原爆投下を表現した器楽作品としては、最も早い作品の一つとなる。日本では被爆から10年目となる1955年8月に、朝比奈隆指揮、関西交響楽団(現在の大阪フィルハーモニー交響楽団)によって広島で初演。1950年代には冷戦下の東欧諸国でも演奏されたが、作曲家の死とともに、その後は母国フィンランドでも忘れられた存在となった。

 

【参考文献】

能登原由美  2015  『「ヒロシマ」が鳴り響くとき』春秋社