音の記憶

written by Yumi Notohara

本の紹介〜田崎直美著『抵抗と適応のポリトナリテ』(アルテスパブリッシング、2022年)

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一次資料の緻密な調査の上に論じられたもので、政治と音楽の一筋縄ではいかない入り組んだ関係性を見事に明らかにしてくれます。日本の戦時下から敗戦後にかけて見られた日本の音楽界の揺れに通じるものもあります。

ですが何よりも、 ウクライナ危機で揺れる欧米の音楽界を彷彿とさせるものがありました。

 

政治体制が激動する時代にあって、音楽は「芸術的価値」だけで生き延びることは難しい。個人の力では抵抗できない「時代の渦」はありますが、逆にいま、身の回りにある作品や演奏についての「評価」が、必ずしも「芸術的価値」のみからなされているわけではないということも、示しているように思えてなりません。