音楽の力?:ロンドンのヘンデル
研究論文「体験記にみる原爆の『音』」掲載のお知らせ
「音楽は『戦い』をいかに表現してきたか」受講生発表レポートが紀要論文に
2021年度前期に私が2つの大学で行った講義「音楽は『戦い』をいかに表現してきたか」の中で、講義最終回で行われた受講生による発表(レポート)の一つが、名古屋大学の紀要『JunCture:超越的日本文化研究14』に掲載されました!
掲載されたのは、坂井威文さんによる発表内容で、坂井さんは信長貴富作曲《Fragments -特攻隊戦死者の手記による-》を取り上げ、「公」と「私」の視点 から作品を考察しています。
受講生による発表スライドのうち、優れたものについてはこのブログに以前掲載しましたが(下記参照)、そのスライドを見た紀要編集長の先生から坂井さんに「ぜひ寄稿してもらえないか」とのお誘いがあり、内容を加筆修正した上で見事に掲載の運びとなりました。
なお、坂井さんの論文は下記をクリックしてダウンロードすれば読むことができます。
https://nagoya.repo.nii.ac.jp/records/2005128
セント・オーバンズ大聖堂とロバート・フェアファクス
『メルキュール・デザール』3月15日号では、セント・オーバンズの街にある大聖堂と、そこでオルガニストを務めていたイギリス・ルネサンス初期を代表する作曲家、ロバート・フェアファクスについて書きました。
セント・オーバンズは、ロンドンの北西約30キロ余りに位置し、古代ローマ時代に建設されたというイギリス屈指の歴史をもつ街です。シンボルとなるのは、イギリスで最初に殉教したキリスト教徒と言われる聖アルバヌスの処刑の地に建つセント・オーバンズ大聖堂。8世紀末に建立されたようですが、現在の建物はその後、アングロ・サクソン時代、ノルマン時代と異なる建築様式が混合したものになっているとのことです。
なお、イギリスではクリスマス前の1ヶ月ほど、チャリティーの一環でポストの上に様々な手編みのオブジェが飾られていたのですが、大聖堂近くのポストでは、なんとこの聖堂を模した手編みの帽子が被せられていました。上記の写真は、イギリスが寒波に見舞われ大雪になった時に撮影したもの。雪が薄ら積もってとても素敵でした。
この大聖堂とフェアファクスに関する記事については、下記をご覧ください。
国立ホロコーストメモリアル博物館(ワシントン)
プランゲ文庫
プランゲ文庫を訪問しました。ワシントン近郊にあるメリーランド大学の図書館が所有するこのコレクションは、第二次世界大戦後の連合国軍占領下において、検閲目的のために集められた日本国内ほぼ全ての出版物からなるという貴重なものです。対象期間は1945年から1949年11月の約4年余りと長くはありませんが、戦時体制から戦後体制への一大転換期のメディア資料を網羅している点で、稀有なコレクションと言えるのではないでしょうか。
当コレクションの説明によれば、その数は
書籍71,000タイトル
雑誌13,800タイトル
新聞18,000タイトル
報道写真10,000枚
地図640枚
ポスター90枚
その他にも寄贈資料などがあり、例えば米軍関係者が所有していた日本各地の戦後の様子を写した写真資料などが遺族によって持ち込まれるなどの機会も最近は増えてきているそうです。同じ日本の写真でも、海外からの視点が入っている点では大変興味深いですね。
また、戦時中に建設され、終戦とともにGHQに接収された海軍館(東京)の所蔵資料も収められています。こちらはまだほとんど手付かずのようで、研究者による調査が待たれるところ、とのことでした。
プランゲ文庫については、児童書や文学書、政治関係資料などのリスト化やデジタル化、研究は比較的進んでいるようですが、音楽については遅れているようです。今回の調査目的は、音楽に関する検閲の実態を把握するためのものでしたが、それらを今後精査していくことで、これまで気づかなかった興味深い点が浮かび上がってきそうです。
なお、プランゲ文庫を閲覧するには、事前に当館への連絡が必要です。コレクションの内容やアクセス方法などについては、当館のサイトをご参照ください。
「英国探訪記」続報
前回10月の投稿から久しぶりの投稿となりました。この4ヶ月の間に書いたものについては、少しずつアップしていきます。
とりあえず、毎月1回の予定で『メルキュール・デザール』に寄稿している「英国探訪記」の一覧を下記に掲載します。なお、2023年1月号は休載しました。
・②「伝統と幻想」『メルキュール・デザール』11月号
・③「戦死者を悼む」『メルキュール・デザール』12月号
・④「ダンスタブルを訊ねて」『メルキュール・デザール』2月号
この「英国探訪記」は、今後、イギリスの作曲家(ルネサンスから近代まで)と演奏家(現在活躍中の人)に焦点を当てて書いていく予定です。
*本記事のトップにある写真は、20世紀初頭に活躍したイギリスの作曲家が幼少期を過ごした家の内部で、置いてあるピアノは、彼の最も有名な作品を作曲した際に使われたと言われるものです。その後ろにある肖像画に描かれたこの作曲家、誰だか分かりますか?