音の記憶

written by Yumi Notohara

ヘンデルの《メサイア》ゆかりの地

ロンドンにあるヘンデルゆかりの地を訪ねてきました。当初は「ヘンデル・ハウス博物館」に行く予定でしたが、来春まで休館中とのことだったので、ヘンデルが繰り返し慈善コンサートを開き、《メサイア》が毎年演奏されていたという捨子養育院の跡地へ。もちろん、当時の建物がないことはわかっていたのですが、その面影が少しでも残っていないかと確かめたかったからです。けれども、訪れてみると、設立者の思いが今なお受け継がれているということがよくわかりました。

捨子養育院の跡地

というのも、そこは現在、子どものための公園になっていて、しかも「子ども連れでない大人は入園禁止」という標識まで出ているほどなのです(ちなみに、門の所には警備員がいて、二人の年配女性が入ろうとすると注意をしていました)。また、その周辺には子どもや青少年のための施設があり、その地に受け継がれてきた基本的な理念は250年前からほとんど変わっていないことがよくわかりました。

「子ども連れでない大人は入園禁止」との表示が

捨子養育院があったことを示すプレート

なお、下記の絵は、1753年時の様子。広々とした敷地や門の場所などは当時の外観を留めているようにも思います。

捨子養育院(Foundling Hospital)外観図(1753年)

なお、《メサイア》も含めて音楽が演奏されていたとみられる礼拝堂については、それからほぼ半世紀後のものにはなりますが、下記のような絵がありました。

捨子養育院内部にあった礼拝堂
Thomas Rowlandson、Augustus Charles Puginによる画、1809年)

ヘンデルが生きた頃の姿はもう跡形もありませんが、この地に息づく人々の思いを知っただけでも、作曲家や作品に対する見方が少し異なってくるように思います。

なお、公園の真裏には「捨子養育院博物館」もあるようなので、次回訪れてみたいと思います。

 

*捨子養育院跡地へ行くには…

 地下鉄Russell Square駅より東へ徒歩5分